2018年11月7日水曜日

人類の原罪とは? 戦争の歴史


朝鮮戦争の終結が行われるのかどうかに世界の注目が集まっている。

世界中で、アメリカ、ロシア、中国、日本が直接関係する紛争地域は朝鮮半島だけであり、この地での紛争にアメリカ、ロシア、中国、日本、韓国が巻き込まれれば、世界のGDP2分の1が影響を受ける。それに、北朝鮮のミサイル・核技術がイランに流れ、イランはロシアと一緒にシリアや反イスラエル勢力を支持する。そして、中東からの数百万人の難民がヨーロッパに流れ込み、イギリスはEU離脱を強いられる。そういう意味で北朝鮮問題は世界の最大のリスク要因なのだ。しかし、イギリスのEU離脱と北朝鮮の関係を見抜くヨーロッパ人はいない。そこには、ヨーロッパ中心の、即ち、ヨーロッパ・キリスト教世界中心の偏見が欧米にあるからだ。

世界の歴史は戦争の歴史だと言ってもいい。史上初の公式な軍事記録に残された戦争は、紀元前1286年のシリアで、古代エジプトとヒッタイトがオロンテス川一帯で戦った戦争だと言われている。これは、エジプトのラムセス2世の治世にあたり、モーゼもこの王の時代にヘブライ人の出エジプトを指揮したと言われている。そもそも、アブラハムがメソポタミアのウルを離れたのも、都市国家ウルの滅亡とアブラムの弟ハランの死が関係していたと言われる。そして、救世主キリストが現れたのは、ローマ帝国のエジプト征服、クレオパトラの死、イスラエルの属国化のあとだ。救世主キリストの出現も戦乱の果てであった。

東アジアでも、中国は春秋・戦国時代で古典文化を完成させた。それ以降は、各王朝が戦乱で亡び、新たに勃興し、中国の歴史が作られてきた。最後は、国民党と共産党の戦いだ。日本の歴史も、倭国の大乱、卑弥呼と狗古知卑呼の戦いから始まっている。ただし、白村江の戦いで日本と朝鮮半島は完全に分離し、元寇、秀吉の朝鮮出兵(対明戦争)くらいしか対外戦争はなかったが、明治維新の戊辰戦争以後、最後に太平洋戦争で原爆を落とされるまで、近代日本の歴史も戦争の歴史だった。

このように見てくると、いかに人類が戦争を好むのかが現れている。人類同士の戦いに対する抑止力は非常に小さい。これは、他の生物には見られない特徴だ。こういう同胞殺傷性向に対する最大の抑止力は宗教だ。ところが、人類は宗教のために戦争も起こす。同じキリスト教でも、異端は迫害される。同じ神を敬っていても、キリスト教徒はユダヤ教徒を迫害し、イスラム教徒を支配して植民地化する。いかに、人類が紛争、戦争を好むかが人類の歴史で現れている。

戦争の出発点は殺人だ。サル類の間には戦争はない。人類がサル類の世界を離れ、知性をもった生物になったとき、同類攻撃に対する抑止がなくなっていった。これは、エデンの園でアダムとイブが知恵の実を食べて、神によって追放されたとの記述に関係する。

「多く与えられた者は、多く要求される」という言葉が聖書にある。他の生物を征服できるような知恵、武器を手に入れた人類には、それを同胞に向けない知恵が求められた。しかし、石器時代には倒した獲物の奪い合いで人間同士が相争い、互いに武器を使う。これが戦争の取発点だ。そして、殺された仲間に復讐心が芽生え、その報復を行う。これが、人類の罪のサイクルになった。

全ての人類がこの罪のサイクルに巻き込まれたとき、民族同士の争いが当たり前になる。そうすると神は人類を見捨ててもいいところだが、アブラハムに特に目をかける。そして、その子孫のユダヤ民族に目をかける。エジプトで奴隷にされたときはモーゼを使って救う。新バビロニア王国によって滅ぼされかかったときも、ペルシャを使ってユダヤ人を救う。ペルシャの支配が強まればアレクサンダー大王によってペルシャを滅ぼす。これで、ギリシャ文明がユダヤ人にも浸透する。ローマ帝国に征服されたときはイエス・キリストを送る。その後、2000年間に渡ってヨーロッパ人に迫害されてきたユダヤ人を救い、イスラエル国を再建させる。人類が戦争志向を捨てない限り、神はユダヤ人への肩入れをやめない。

ところが、今では、イスラエルは核兵器も保有し、中東第一の軍事国家となっている。イスラエルと同程度の数のユダヤ人が生活し、有力なユダヤ人の多いアメリカは軍事超大国となっている。実際、「世の終わりに向けて、国々は互いに対立する」とイエス・キリストは予言している。人類の好戦的な特徴は最後まで治らない。

21世紀の開始前後には、もはやヨーロッパでは戦争は考えられない、と考えられていた。EUで各国は平和的に結びつき、欧州は統一され、ロシアもG7グループに加えてもいいくらいに民主化した。中東も安定し、中国も経済発展を通して民主化するだろうと考えられていた。世界経済はグローバル化し、各国は経済競争をするだけだろうと考えられていた。

しかし、2001年の同時多発テロによって世界の平和ムードは吹っ飛び、2014年のロシアによるクリミア併合でヨーロッパ諸国のロシア観も修正を強いられた。そして、現在にいたる中国の南シナ海武力支配によって、中国に対する幻想も失われた。要するに、人類は紛争・戦争を好むDNAを持っているのだと考えざるをえない。これは、憎悪、嫉妬、憤怒、復讐心、利己主義、傲慢、無知、不信といった人間の原罪に由来すると考えるのが一神教だ。そして、一神教以外に抑止手段がないのも事実だ。一神教でない日本民族が明治維新以来、戦争に走ったのもある意味で当然だった。一神教の研究が平和への道なのだ。