2017年のノーベル賞には日本国籍者は一人も出なかったが、日本系のイギリス人が文学賞を受賞した。1901年からの国別上位授賞者数は次のようになっている。
(1)アメリカ265人、(2)イギリス84人、(3)ドイツ81人、(4)フランス51人、(5)ロシア34人、(6)スエーデン29人、(7)日本 25人、(8)オランダ18人、(9)イタリア17人、(9)スイス17人。
この中で、非欧米、非キリスト教国は日本だけ。欧米はギリシア・ローマ文明の伝統とキリスト教の伝統によって近代文明の発祥の地になっている。現在の世界の主流は欧米発の文明であり、エジプトやインド、中国の伝統ではない。それを可能にした精神文化の核はユダヤ・キリスト教だ。ニュートンは聖書研究者でもあり、アインシュタインはユダヤ人だった。旧約聖書、新約聖書を2000年間読んできたキリスト教徒(ユダヤ教徒)が産業革命を起こし、近代科学・技術を発展させることができたわけだ。
他方、エジプトのピラミッドを4600年間見ていても、インドの哲学書を3000年間読んでいても、中国の仏典や論語を2500年間読んでいても近代文明は生み出せない。しかし、日本はその西欧文明に伍すことができた。そのカギとなるような聖典は日本にあったのかということになる。
そもそも、1万年以上続いた縄文時代の土器芸術に象徴される古代日本人の芸術性が鍵となったのかも知れない。あるいは、現在も日本全国に存在する8万以上の神社が象徴するような民族の霊性が基盤になったのかも知れない。あるいは、聖徳太子以来の仏教の伝統が日本人の知的水準を高めていたのは間違いない。そして、日本書紀や古事記が日本人の精神性に与えた影響、万葉集が日本人の文化性に与えた影響は我々が思っているより大きかったかも知れない。
しかし、最も大きかったのはこの日本列島の風土的な恩恵と、海外からの侵略には合わなかったという歴史的な安定性が大きい。その中で縄文以来の霊性、精神性、文化性が発揮されたことになる。そして、ユニークな日本という国、日本人ができあがった。その象徴としての天皇家には意味があるが、もっと基本的には富士山や桜の花が日本のユニークさの象徴だということになる。あるいは、正月などを祝う風習自体が象徴だ。