「ヒストリアイ」というのは人類初のヘロドトスの歴史書のことだが、日本の歴史は世界の中でどう位置にあるか。人類全体でどのような位置を占めるかという観点も重要だ。
ローカルな日本の話だけに終わっては余り役に立たない。そのような歴史観はむしろ、日本の針路をあやまたせ、大変な悲劇をもたらす可能性がある。世界的に、ということは、欧米中心にということだ。キリスト教文明が世界の主流になった以上、その世界文明の中で日本はどう位置付けられているか、その存在意義は何なのかということだ。
欧米中心のキリスト教文明の前に、アジアでの日本はどうなのかということも大事だ。インド、中国という古代文明発祥の地から遠く離れて、その文明・文化を一方的に受容してきた日本はアジアでも大きな存在ではなかったが、中国の支配からは無縁であったということが大きな特徴だ。東南アジアはインド発の仏教、ヒンドゥー教、そして、アラブ発のイスラム教の影響によって独自性が希薄になったが、日本は仏教は中国経由で受け入れ、中国の道教も間接的に神道に反映されただけで、日本の独自の文化性は保持された。朝鮮が全面的に中国の儒教文化の影響を受けたのとは大きな違いがある。要するに、アジアでも日本はインド、中国の2大文明圏に対して独自性を維持していた。
西暦1500年頃にヨーロッパの世界進出が始まり、アメリカが発見され、世界中がヨーロッパのキリスト教国の植民地になった頃から日本の独自性が現れてきた。
インドや中国はヨーロッパ勢力に屈していくが、日本は切支丹受容、切支丹反発、鎖国、そして、アメリカの黒船に屈して開国、西洋化、近代化へと突っ走る。世界的に日本の存在の意義が明らかになるのはこの頃からだ。日露戦争に勝って、白人勢力に抑えられていた他のアジア民族に希望を与え、第二次大戦では結果としてヨーロッパ勢力を東アジアから追い出し植民地の民族独立に火をつけ、戦後は世界第二の経済大国となってG7で唯一の非白人国となった。この日本の影響で中国などアジアの近代化が進み経済も発達した。明らかに日本のおかげでアジア、アフリカ諸国はヨーロッパ諸国に対抗する経済力を得て、世界もリベラル・多様性の尊重など、ヨーロッパ・キリスト教文化以外の価値観を認めるようになった。アメリカの黒人の社会進出もこの影響の延長線上にある。まさに日本は20世紀の世界のために準備されていた国だということになる。
しかし、世界的には神は何のためにユダヤ民族を存在させているのかということが鍵だ。特にキリスト教が成立した後も、なぜユダヤ教徒は存続するのか、何のために4000年も生き残っているのかということは大きな謎だ。